詩人の料理本

作れる料理を増やしたい。

最近は母が仕事で家にいないことが多いので、料理をする機会が自然と増えた。今日はぶり大根を作った。盛り付けの仕方がわからず、いつも不器用度満点の見た目になってしまう。なんともズボラ料理です、いつも。母親譲り。

お皿を選ぶのはたのしい。お皿が立派だと、料理も立派なふりをしてくれるので助かる。

 

先日、本屋さんで見かけたこの書籍にふらふらと惹かれ、少し立ち読みしてみた。

 

茨木のり子の献立帖 (コロナ・ブックス 207)

茨木のり子の献立帖 (コロナ・ブックス 207)

 

詩人の茨木のり子さん、が、生前どのような料理をされていたのか、現存する資料(ご本人のメモ書きなど)からレシピが再現されている。

実際に「今日の晩御飯に作ろう!」とはならなそうだったのだけれど、よだれが出そうになる感じ。空気感にすごくハマる感じ。

茨木のり子さんの筆跡、すごくキュンとしてしまった。

って、お金なくて買えなかったんですけど。来月は必ず購入するぞ。

 

茨木のり子さんのある詩に胸打たれたことがあって。引用していいですか?ちんまい個人の日記なので、いいですよね。

汲む―Y・Yに―   茨木のり子

大人になるというのは
すれっからしになるということだと
思い込んでいた少女の頃
立居振舞の美しい
発音の正確な
素敵な女の人と会いました
そのひとは私の背のびを見すかしたように
なにげない話に言いました

初々しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき
堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを
隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました

私はどきんとし
そして深く悟りました

大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子どもの悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
わたくしもかつてのあの人と同じぐらいの年になりました
たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです

 

この人……わたしのことを言ってる! と思ってしまった。つい。

そういうふうに読んでいる人に一対一の関係だと思わせられるのが、詩人の仕事なのでしょうね。

この詩、どのパートも完ぺきに気持ちいいの、わかりますか。いま読んでもうるうるしてしまう… …

「あなたは弱いよ」と友人から言われたことを思い出す。弱ってるときに……笑。

そういう自分の精神を本当に憎んでいたんだけれど、「頼りない生牡蠣のような感受性」という言葉の連なりをみたとき、ちょっとだけ肯定できた気がして。

 

年老いても咲きたての薔薇 柔らかく

すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……

 

うわー!完ぺきだ。生涯で詩を朗読することがあったら、絶対この詩だ。そんな機会、ないでしょうけど……。