大森靖子は小説家ではないけれど

朝から泣いてしまいそうになった。

 

本日、発売された大森靖子のニューアルバム『kitixxxgaia』に収録されている

《夢幻クライマックス かもめ教室編》

という一曲。

 

もともとは《夢幻クライマックス》という、°C-uteに提供された楽曲なんだけど、

℃-ute『夢幻クライマックス』(℃-ute[Dreamlike Climax])(Promotion Edit) - YouTube

自身のアルバムに収録する際に、曲のアレンジはピアノのみに変更され、歌詞も書きかえられているようで。

 

この曲の歌詞を見て、物語を描く上で重要なものは「長さ」ではないんだな……と思ってしまった。

これは短い短い小説だ、と。

 

夢幻クライマックス かもめ教室編 大森靖子 歌詞情報 - 歌ネットモバイル

↑こちら歌詞。

 

少しだけ聴けます。iTunesだともう少し長めに聴けるのでぜひ。(リンクからは飛べません)

 

 ※以下、めちゃくちゃ個人的見解です。

 

曲の中の登場人物は、ピアノを習っている男の子。そして、その男の子と同じピアノ教室で、一つ前の時間帯にレッスンを受けている女の子。

 

歌詞は、最初から最後まで男の子の視点で語られるのだけど、曲のはじまりから鋭さに震えてしまう。

 

あの子 この教室のピアノじゃつまらない

この街の優しさじゃ 弾けない曲があるの

この彼の思考、めちゃくちゃ芸術家じゃないですか……。きっと、「あの子」は技術的に弾けないわけじゃない。たとえば、悲哀や残酷さ、みたいなもの。あの子が住む「平凡で普通の優しい街」という環境では表現できない、「弾けない曲」がある。

と、勝手に解釈して鼻血が出そうになりました。

 

で、おそらくあの子は何らかの理由で教室から去ってしまう。

それでも彼はいつも通りに日常を刻む。

でも、どこかに秘めていた感情が徐々に剥き出してくる。

まどろみ越し僕はいつも以上に

いつも通りいつもを続けるだろう

盗んだ制服 あの子を纏って

come on かもめ教室

さらに「僕」の勢いはどんどん増していく。

ソナタをカゴに投げ 坂道こぐ午後5時

先生 僕はもっとマシな僕になりたい

 

明日起きて僕は いつも通りの

チャリをまたぎ だけど 何度も挑む

あの子になりたい ピアノに溶けたい

come on かもめ教室

 

一行、一行の連なりに胸がしめつけられる。

「先生 僕はもっとマシな僕になりたい」、の一節、そして、「あの子になりたい ピアノに溶けたい」。もう、たまらん。あかん。

 

「僕」は、「あの子」への才能に対しての憧れなのか、恋なのかわからない激しい感情と、

自身の「音楽」への思い入れや熱っぽさに反して、なぜだかマシになれない自分の存在に、

つよく掻き乱され、それらの感情のあいまで揺れているのだろう。

盗んだ制服を纏っている描写は、あの芸人さんの一件を思い起こしてなんとも胸が痛くなる。

 

旋律は深く深く

インサイドラブ

 僕のターンさ

音楽になれたら消えてしまうかしら

 

寂しい

 

この頃は久しく小説を読んでいないんだけれど、読書体験で得られる胸が熱くなる感覚を、この音楽で味わった。

歌詞のことばっかり書いてるけど、音質というか、ピアノ単独のアレンジが美しく素晴らしいんですよ……。

 

桐島、部活やめるってよ』で知られる小説家・朝井リョウ氏は、「彼女が小説家でなくてよかった」と、大森靖子が『絶対少女』をリリースした際にコメントを寄せている。

「私は【大森靖子】を三人組だと思っている。優れた小説家と、優れた音楽家と、優れたパフォーマーが奇跡的に集まってやっと構成されるべき才能だと思っている。

(中略)

私は彼女の音楽を小説を読むように聴いている。新作「絶対少女」の中にも、とっておきの一行がごわごわと蠢いている。

(中略)

彼女が小説家でなくてよかったと、このアルバムを聴いて、改めて思った。

セカンドアルバム 絶対少女 | 大森靖子公式ページ

このコメントに首が痛くなるほどうなずける。

歌詞はもちろん、大森さんのブログもすっごく好き。 言語感覚が輝いている…。

 

実は金欠でまだアルバムは買えていないんだけどね!

きっと最高だから買おう!買います!